2021/04/03

WSL2で仮想GPIO

   WSL2でLinuxカーネルのgpio-mockup機能を使って仮想GPIOを使えるようにします。


●今回の環境

 Windows10


 ディストリビューション

 カーネルバージョン

 今回の環境はまっさらなWSLで説明しますが、前回の仮想CANのカスタムカーネルの環境でもできます。

 Linuxカーネルをビルドできる環境が必要です。下記を参考にしてビルド環境を用意してください。

●方法

 GPIO機能、GPIO-MOCKUP機能を有効にしたカスタムカーネルをビルドします。
 カスタムカーネルができれば、あとはgpio-mockupモジュールをロードし、仮想GPIOデバイスを作成すれば、GPIOが無いPC上でGPIO操作ができるようになります。

●カスタムカーネルの設定手順

 menuconfigを立ち上げます。
$ make menuconfig

手順1:Device Drivers に入ります



手順2:GPIO Support を有効にする

 Device Drivers 内へ入り(リターンで入る)、GPIO Support を有効にします。


手順3:GPIO Testing Driver を有効にする

 GPIO Support 内へ入り、GPIO Testing Driver を有効にする。


 GPIO Testing Drivber が仮想GPIOドライバです。
 また、GPIOのsysfsインターフェースが必要なら、「/sys/class/gpio/... (sysfs interface)」も選択します。
 利用できるGPIOの数は「Maximum nuber of GPIOs for fast path」で設定します。

手順4:設定を保存して終了する

ここまでできたら、忘れずに設定を保存して menuconfig を終了します。
また、Linuxカーネル名を変えておくとよいでしょう。


手順5:カーネルをビルドし、仮想GPIOのLKMをインストールする

$ make
$ sudo make modules_install
 → /lib/modules の下に、カーネル名でディレクトリができます。
  この下の kernel ディレクトリ以下に仮想GPIOの gpio-mockup.ko ファイルが格納されます。

手順6:カスタムカーネルでWSL2を起動する

 今作った vmlinux ファイルでWSL2を再起動します。
 やり方は、以下の手順6~を参考にしてください。

手順7:GPIOを有効にしたカーネルで起動できていることを確認する

$ uname -a
Linux earth 5.4.72-microsoft-standard-WSL2-gpio #1 SMP Wed Mar 2 20:32:16 JST 2021 x86_64 x86_64 x86_64 GNU/Linux

 ここまでが、GPIOを有効にしたカスタムカーネルの作り方でした。


●仮想GPIOデバイスを作成する

gpio-mockupドライバをmodprobeコマンドで読み込みます。

書式:
    # modprobe gpio-mockup gpio_mockup_ranges=[x,y](,…,[x,y]) (gpio_mockup_named_lines)

    x:lineの開始番号、または、-1
    y:lineの終了番号、または xが-1のときlineの個数
 ※x = -1 のとき、割り当ては後ろからになるので注意

例1:gpio0~gpio7 の8つのGPIOを割り当てる
$ sudo modprobe gpio-mockup gpio_mockup_ranges=0,8
 → /dev の下に、gpiochip0 ができ、8line が使用できる
  また、sysfsインターフェースがある場合は、gpio0~7 までexportできる

例2:gpiochip0に4つ、gpiochip1に8つのGPIOを割り当てる
$ sudo modprobe gpio-mockup gpio_mockup_ranges=0,4,8,16
 → /dev の下に、gpiochip0 と gpiochip1 ができ、それぞれ 4line と 8line が使用できる
  また、sysfsインターフェースでは、gpio0~3 と gpio8~15 までexportできる

例3:gpiochip0とgpiochip1に後ろから8つずつGPIOを割り当てる
$ sudo modprobe gpio-mockup gpio_mockup_ranges=-1,8,-1,8
 → /dev の下に、gpiochip0 と gpiochip1 ができ、それぞれ 8line が使用できる
  また、sysfsインターフェースでは、gpio504~511 と gpio496~503 までexportできる

例4:各ラインにラベルを付ける
$ sudo modprobe gpio-mockup gpio_mockup_ranges=0,8,8,16 gpio_mockup_named_lines
 → 各ラインにラベル名が gpio-mockup-A-*、gpio-mockup-B-* という名前が付く
  また、sysfsインターフェースでは、gpio-mockup-A-*、gpio-mockup-B-*というような名前でexportされる


以上で仮想GPIOが使えるようになります。
libgpiod tools も普通に使えます。


●sysfsインターフェースのアクセス権について

 WSLでは、initプロセスが動いていないので、udevが動作していないため、/sys/class/gpio 以下のアクセス権がすべて root:root になってしまいます。
これらの対処法は次回まとめます。

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